今回は夏に読みたい小説をご紹介します。
夏の庭
湯本香樹実 新潮文庫
まずは王道とも言える少年たちのひと夏を描いた名作!
小学6年生の少年3人組。彼らは生きる屍のような老人を観察することにした。人が死ぬ瞬間を見るために。いつしか少年たちと老人は交流を深めていく…というお話。
太っちょとメガネと僕というありきたりな3人組(笑)でもとてもいい子たち。
想像通りの展開のような気もするけど、やっぱりよかったんです。
この子たちのかけがえのない夏休みを一緒に体験できたような気持ちで読み終えました。
小学生って好奇心旺盛で、すぐに行動ができる。大人になるといろんなことを考えちゃうからなぁ。
スイカや花火など夏らしい描写もたくさん出てきて、本当に夏にぴったりの1冊です。
TUGUMIつぐみ
吉本ばなな 中公文庫
けっこう昔の作品になりますが、今読んでもすばらしい作品。
病弱で生意気なつぐみ。彼女と育った海辺の町へ帰省したまりあ。1人の少年と出会い、ふるさとの最後のひと夏を過ごす透明感あふれる物語。
つぐみは口も悪く意地悪。でもそうやって反発したり悪態をついたりすることで生命力を保っていたのかも。
ただ、自分の気持ちには正直でまっすぐ。周りの人たちはきっと、そんなつぐみの魅力にどっぷりはまっているのだろうとも思いました。
どうやら西伊豆がモデルのようです!
フラダン
古内一絵 小学館文庫
工業高校に通う男子高校生が強引にフラダンス愛好会に参加させられ、フラガールズ甲子園を目指すことに。震災後の福島を舞台に描く、笑いあり涙ありの青春小説。
ポップな表紙ですが、震災が背景にあるので、被災を経験していない自分には分かり得ない苦悩や思いも描かれています。
それを乗り越え、甲子園で踊るシーンは感動します!
男性が参加するフラダンスも見てみたいと思いました。
解説が南海キャンディーズのしずちゃんだったこともあり、映画『フラガール』も観たくなりました。
笑いもたくさん、フレッシュな青春も感じられ、感動も味わえるおすすめの作品です。
風待ちのひと
伊吹有喜 ポプラ文庫
こちらは打って変わって大人な夏物語。
‟心の風邪”で休職中の男と、家族を失った傷を抱える女。偶然の出会いがきっかけで、39歳のひと夏をともに過ごすことに。人生の再生を描いた物語。
正直、最初は女の人のイメージなんか違うなと思ったのですが、読み進めるうちにどんどん魅力的な女性に見えてきます。
男性、女性と交互に視点がかわっていく構成なので、読み手としては2人の思いが痛いほど伝わってきます。ゆえに切なく、心がキュッとなりました😢
39歳、まだ遅くない!やり直せる!
固まった心も体もほどけていくようなそんな優しい小説でした。
少女
湊かなえ 双葉文庫
さわやかな夏物語、ではなく夏休みが舞台のミステリー。
2人の女子高生の視点で順番に進んでいく物語。人が死ぬ瞬間を見てみたいと思った由紀。死体を見たら、死を悟ることができ強くなれると考えた敦子。2人の人生が交差するとき何かが変わる…
個人的に湊さん作品の中でも上位に入るであろうおもしろさでした!
いろんな人がつながっていき、それが明らかになるたびに「えっ⁈」と驚き、よくできてるわぁと感心するばかり。
いい子にみえて何を考えているかわからなかったり、冷たいようで実は友達思いだったり、そんなギャップに騙されたような感覚にもなります。
湊さんならではの、パズルが立体的に出来上がっていく感じをしっかり味わえます。
「因果応報」が印象に残りますよ、きっと。
ということで今回は夏をテーマにした小説をご紹介しました。
今後もいろいろな切り口で文庫本を紹介していきます。